【中国・深セン】月5000元(約8万円)の収入で億ションに住む人々

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中国人との付き合いを通して、かねてより不思議に思っていたことがあります。

それは、ごく普通の環境に生きてきた、いわゆる庶民的な家庭の出身者と思われる人々の子息が、かなり余裕のある暮らしをしているという事実でした。

住居は最新の「タワマン」またはそれに類するような所に住み、車は高級ドイツ車、子息専用のセカンドカー、高額な留学費用もさらりと捻出し、子息は海外で小遣い付きでまずまず不自由のない生活を送っている・・・

内部事情はわかりませんが、ちょっとしたセレブにも見える余裕のある暮らしぶりです。

それで家庭のことを聞いてみると、特に社長でもなく企業家でもなく、政府役人でもない普通の職業ー国営企業のサラリーマンとか、教師や職人の家庭に生まれているのだと言います。

こんなことに疑問を感じているうちに、以下の腾讯网(テンセントのネットニュース)の記事に出会い、納得感が得られました。

深圳富人区的“假富人”!住1500万房,却每月连5000工资都没有

「深センの高級住宅地の”ニセ金持ち”!1500万元の家に住んでるのに月収は5000元に満たない」

という記事。

非常に分かりやすい記事だったので、他のサイトから得られた情報とともに、解説します。

背景は、住宅価格の急激な上昇

まず、結論から言うと、月収がそれほど高くなく、セレブでもない人々が高級タワマンに住める理由は、北京・上海・深センなどの第1級の都市の住宅価格がここ数十年で激しく上昇しているからです。

その上昇率は、日本のバブル時代の比ではありません。

例えば、この記事の中で紹介されている小章さんの場合はどうだったか。

こちらが原文です。

小章是深圳人,一家三口住在南山。小章虽然是本地人,但家里只有一套房子,位于后海海月花园,与深圳土著有好几栋楼可租不同。1999年,小章的父母花光所有积蓄20万元,以2000平方米的价格买了一套120平方米的公寓。”当时,只有穷人住在南山,因为他们买不起罗湖的房子和福田的房子”。但是小章的父母没想到,一辆荒芜、泥巴车不停经过的后海,竟能发展成今天的局面。

现在看看一些房地产网,海月花园120平的房子,已经涨到近1500万。如今,后海已成为一个享有盛誉的海滨居住区,高端楼盘、商场、文化娱乐场所、高端餐饮如雨后春笋般涌现。而小章生活的地方,价格比其他地区高。一把青菜在其他地方只有3.5元,这里是13.5元,洗、剪、吹的平均价格都在150元以上。就连全国连锁店麦当劳也比其他地方卖的贵。

随着房价的一路上涨,越来越多有钱人聚集于此,周边的超市和餐厅等地方的消费水平自然就提高了不少,但是小章家庭收入不高,母亲收入4000元,父亲打零工,她还是研究生,所以家庭消费基本上都是靠母亲维持的。小章说,在家里有很多这样的例子。上中小学,周围的学生也是贫困家庭。

很多网友表示:这是在无病呻吟!既然日子这么难过,何不把房子卖了去深圳其他地方买个房子?1500万卖掉现有的房子,用一半的钱去龙岗或其他地方都可以买个别墅了,剩下的钱存在银行都够下半生用了,何苦要如此苦苦支撑、苦不堪言?现在,她的父母每天都在为是否卖掉房子住二线城市而争吵。虽然当时正是买房的好时机,但房子是刚需,无法转化为财富,居住在那里的人也没有成为“富人”。

但是他们的房子真的可以说卖就卖吗?首先我们要明白,固定资产并不是随时都能够拿出来变现的,尤其是房子这种大件的资产,对于那些仅有一套当地房产的人来说,就算急用钱想要将房子卖出去变现,也可能要等待几个月、半年多的时间才会有人上门询价,还不一定能够卖成功。

小章さんは深センの人で、一家3人で南山という地区で暮らしていました。1999年当時、小章さんの両親は20万元ほどの貯金しかありませんでしたが、2000元・平方メートルの価格で、海月花园に位置する120平米の住宅を購入しました(実質的には100平米程度と思われます:筆者注)

当時、南山はどちらかというと低収入の人々が暮らす地区で、将来ここが発展し大変貌を遂げるとは夢にも思いませんでした。

現在ではこの地区で120平米の住宅を買おうとすると1500万元(2億4千万円)くらい必要です(単純計算でなんと75倍!物価上昇分を加味しても、ものすごい上昇率です)。

写真はイメージ

この海月花园は非常に発展が著しい地区で、数多くの高級新築物件、ショッピングモール、娯楽施設、高級レストランが雨後の筍のごとく出現しています。

これに応じて、物価も上がり、相場が3.5元の野菜がここでは13.5元だったり、マクドナルドの価格さえ他の地区より高くなっています。

しかし、小章さんの家庭の収入は変わりません。母親は月に4000元ほど稼いでいますが、父親は臨時雇いのアルバイト、本人は研究生なので、実質的には母親が一家の家計を支えています。

小章さんによると、小中学生時代、彼女の周りもだいたいこんな様子だったと言います。

これに対して、ネット民は「そんなことは心配するに至らない」と反応しています。

「1500万元で売れるのなら、すぐに現金にして半分で別の地区で別荘を購入し、残りのお金を生活に当てれば一生困らないじゃないか」

実際、両親はそのことで決断がつかず、毎日喧嘩しています。

確かに当時は家を購入する絶好のタイミングではあったのですが、結局のところ家は生活のための必需品であり、(そこに住まい続ける限り)いくら値上がりしたからと言って「富人(金持ち)」になるわけではないのです。

(日本だったら固定資産税の支払いによって余計に生活が圧迫され「富人」どころか「穷人」になってしまうでしょう)

それじゃ、ネット民の言う通り売っぱらえば良いじゃないか、と思ってしまいますが、単純にはうまく行かず、実際は買い手を仲介するのに時間がかかり、半年ほどかかってしまうこともあるようです。

しかし実際は、小章さんの家庭のような境遇の人たちでも、多くの人々が自宅を売り抜くことに成功し、多額の現金を手に入れて余裕のある生活を送っているようです。

画像はイメージ

公営住宅の払い下げで富裕者になる例も続出

上海や北京などでは、1990年代に多くの社宅(雰囲気としては日本の公営住宅や団地のようなものと思われます)が住人に安く払い下げられたようです。そしてそれらが、その後都市再開発によって収容(拆迁)され、新築の代替住宅を与えられ、価格が高騰した際に売却によって多額の収入を得た例が多いということです。

日本で言えば、原宿の同潤会アパート(日本の公営住宅の元祖)が表参道ヒルズになってしまった、みたいなことでしょうか?

このような状況は、こちらの日本語の記事が参考になります。

中国人が年収200万円でもポルシェを買える理由

この記事によると、何と上海の家庭数の7.5%が1億円以上の資産を有しており、ここまで来ると「一握りのお金持ち」とは言えない状況になっていると言えるでしょう。

この中には不動産の転売で儲けた家庭もかなりの割合に上ると思われ、低所得層でありながらもハイクラスな生活を送る、というアンバランスな状況を生み出していると言えます。

単語帳

出人头地 chū rén tóu dì 人より抜きんでる事
雨后春笋 yǔ hòu chūnsǔn 雨後の筍
中日同義
楼盘 lóupán 物件
无病呻吟 wú bìng shēnyín 取り越し苦労をする
参考文では「大したことではないのに大げさに騒ぎ立てること」の意味で使われている
拆迁 chāiqiān (強制)立ち退き
建設計画により立ち退きを迫ること。
中国の街では、古い建物に「拆」とペンキで殴り書きされている光景を良く目にする。言うまでもなく、取り壊し予定の建物という意味だ。
刚需 gāng xū 必需品
刚性需求の略で、生活レベルや価格によって「伸び縮みしない」需要、つまり必需品を意味する。主に不動産を指すようだ。

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